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スター・トレック

☆スター・トレック
 夕刻に帰宅後、妻を連れ、「スター・トレック」を観に行く。これも「スピード・レーサー」のときと同じく、初日。以前から楽しみにしていた。
▼ここからは、少々ネタバレもありますので、ご注意!
 タイトルの前の「板付き」の場面から、もう引き込まれる。これはここに登場するUSSケルヴィン号のエキゾチックな艦長、そしてカークの父親である副長、この二人のチョイ役が、見事に「掴み」を演じているからだろう(ちなみに、スター・トレック映画第一作でも副長は殉職しており、そのときもやはりヘボ副長が最期には英雄となって艦を救うのである。もっと言えば、第二作で殉職する副長はスポック)。
 劇の大枠のモチーフとしては、スター・トレック映画第二作「カーンの逆襲」を下敷きにしており、それにアメリカ映画の美味しいところを全部詰め込んだといった形。*エイブラムスというこの監督は、さすが目が高い。スター・トレック映画の中では、物語作りの名手であるニコラス・メイヤー監督の「カーンの逆襲」が、ホーンブロワー・シリーズへのオマージュである宇宙海洋活劇として、最も面白いのだ。「コバヤシマル・テスト」を使うところにも、第二作への思いが見て取れる。さらにこの「コバヤシマル・テスト」の最中に士官候補生のカークがリンゴを齧るシーンは、帆船時代にビタミン補給としてリンゴが食べられていたことを匂わせるし、それは西洋人ならば常識・定石だ。考えれば、スチブンソンの『宝島』の主人公であるジム・ホーキンス(カークと同名)は、リンゴ樽に隠れて密航するが、ジム・カークもこの物語の中では、ある意味密航のような形でエンタープライズに乗り込むではないか。たとえば、プログラムにもちらと説明されているように、オートバイに乗る若き日のカークは、ジェームズ・ディーンを髣髴(クリス・パインはジェームズ・ディーンのそっくりさんでもある。かれがオートバイを止め、聳え立つ建設中のエンタープライズ号に見とれるシーンは、「ジャイアンツ」でジェームズ・ディーンが製油所に見入るシーンの本歌取りだ)。また、身を持ち崩した酔いどれ医者として現れるボーンズ・マッコイは、言わずと知れたジョン・フォード西部劇の登場人物。思えば、スター「トレック」は、原作者ジーン・ロッデンベリーによれば、西部劇を下敷きにしているのだ。
 それ以外にも、敵であるネロの宇宙船に突っ込むスポックは、「ガリレオ号」事件のときの、「自暴自棄になるのが最も論理的」という姿を思い出させるし、また映画第一作のシーンの引用でもある。パイク艦長が拷問にかけられるとき使われる自白用の宇宙の虫は、第二作のなかでカーンがチェコフに使う虫の二番煎じだ。大団円で車椅子姿のパイク前艦長、あるいはフェンシングが得意のスールー、そして科白の中だけに登場する「アーチャー提督」、いずれも知っている人ならばニヤリとすることばかりだ。そしてこれらの要素が、すべて整合性を以てストーリーの中に収まっている。
 それでけではない。ネロの宇宙船は「エイリアン」のノストロモ号を思わせるし、異星の巨大怪獣は明らかに「スター・ウォーズ」の砂漠の惑星の怪獣、あるいは「ジュラシック・パーク」の恐竜のパロディだ。さらには、エンタープライズ号最初のワープ・ドライブの場面で、スールーがエンジン・コンタクトにしくじるのは、「宇宙戦艦ヤマト」で島大介が波動エンジン始動に失敗するエピソードのパクリだし(スールーは日本人とフィリピン人の混血という設定)、惑星をブラックホールに変えるというのは、「科学忍者隊ガッチャマン」のアイデアを頂いたものだろう。
 ことほどさように、この「スター・トレック」は、映画うるさ方にも、トレッキーにも、また一般の映画好きにも、一粒で三度楽しめる作品に仕上がっている。
 これで「スター・トレック」は息を吹き返したといえるだろう。すでに第二作製作が決まっているともプログラムには書かれている。そしてあの不評だった「エンタープライズ」も、場合によっては新たな命を吹き込まれるかもしれない。

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