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ハリウッド映画『300』

●ハリウッド映画『300』
 ペルシア戦争のテルモピレーの戦いを描いたハリウッド映画『300(スリー・ハンドレッド)』が、いきなり興行成績第一位となったという記事を読んだ。フランク・ミラーというアメリカン・コミック作家原作のCG作品だそうだ。
 ここしばらく、ハリウッドは史劇を多く作っている。『トロイ』『アレクサンダー』『キング・アーサー』などは日本でも上映された。
 ここからわかるのは、いずれもそのテーマが東西の対決ということだ。しかもそのターゲットは、イランだ。トロヤは小アジア沿岸の都市国家、しかしギリシア=アメリカにとっては、最初の「アジア」つまり後のペルシアの暗喩だ。アレクサンダーはその戦術が米軍の模範ともされるくらいで、かれはペルシア帝国を滅亡させたのだから、これはストレートに判る。アーサー王はちょっと捻った作りだが、映画中のかれは、野蛮な東方人たるサクソン族(ゲルマンが東方出身だからこそ、ヒトラーはロシアやコーカサスやウクライナ──みなペルシャやスキタイの勢力圏──にアーリアンのレーベンスラウムを求めたのだ)からローマ=アメリカすなわち西欧世界を守るローマ辺境司令官として描写されているわけで、意図するところは同様だ。
 つまりこれらの映画は、ペルシャ=イランを強大な恐怖の対象として観客に投影させ(「イランのせいで……」)、きたるべき米軍のイラン戦争に心理的に備えさせるという、マインドコントロールの役割を担っているのではないか、と邪推することもできよう。「強いアメリカ」を語る作家トム・クランシーは、『レッド・ストーム・ライジング』の中で、ソビエトのドイツ開戦への心理的仕掛けとして、エイゼンシュテインの映画『アレクサンドル・ネフスキー』が使われるという設定にしていたが、ハリウッドとアメリカは、まさにそれを地で行っているということになる。
 じつは1950年代、やはりハリウッドが超大作史劇を作ったことがあって、『アレキサンダー大王』(リチャード・バートン)、『トロイのヘレン』(ロッサナ・ポデスタ)、それに『スパルタ総攻撃』などはすでに登場している。そしてこの頃は核の恐怖の冷戦時代で、「東」とは当然、ソビエト・中共だった。
(さらに穿って考えれば、ペルシャ軍は矢の雨でスパルタ軍を滅ぼすのだが、これはかつてならソビエトの弾道弾、現在ならイランのミサイルということだ。)
『300』の予告編をサイトで観ると、ペルシア勢はきわめて異教的に、しかも仮面まで被って描かれ、その仮面はともすれば中国的にすら見える。だとすれば、ますます根は深くなる。
 こうしたことは、イランは当然気がついているわけで、
http://www.afpbb.com/article/1413433
に、そのあたりの事情が出ている。
 われわれ、つまりシルクロードの東端にある「日出ずる国」の人間(『ラスト・サムライ』などに描かれるわれわれは何なのか? カルタゴ? 楼蘭? )も、いっそう注視していく必要があるだろう。

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