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青虫チビ

○青虫チビ
 ガラス瓶に入れておいた青虫が、朝になったらいなくなっていた。
 もともとこの青虫は、宅配の野菜についていたので、妻が手をつけずに一週間も冷蔵庫の中に入れっぱなしになっていた。私に取ってくれというので冷蔵庫から出してみたら、丸くなっていたが、やがてもそもそと動き出した。冬眠状態になっていたらしい。全長は1センチもない。体は緑がかった透明で、顔の部分は黒い。のびをしたり、あちらこちらを向いたりして、どんな動物でも子供は愛らしいと、あらためて思った。
 最初は気味悪がっていた妻も可愛くなったらしく、「何て名にする」と言うから、簡単に「チビでいいだろう」と答えておいたら、小さなジャムの空き瓶を持ってきて、ラベルにわざわざ「チビの家」と書いた。青菜と一緒に入れておいたら、あまり構うと死んだふりをしてひっくり返っているが、見ていないと勝手に動いている。そうでなければ寝ているが、瓶を揺らすと、透明な体の中で内臓がふくふくとする。小さなものなのに見飽きない。
 分類に詳しくないので、何の蝶になるのかも判らないが、楽しみにしていた。「チビは寝たか」などと気になった。
 ところが、ガラス瓶に入れた次の日の朝、起きてテーブルの上の瓶の中を覗くと、チビがいない。瓶の口のところにサランラップをかけてゴムで留め、空気抜きのためにラップを軽く破っておいたのだが、夜の間にそこから抜け出たようだ。
 踏んだら可哀想だし、気をつけてテーブルから壁から床まで探したが、とうとう見つからなかった。「干からびてしまうだけなのに、馬鹿だな」と哀れになった。
 蝶になるまで楽しみに育てようと思っていただけに、残念だった。わずか一日なのに、名前までつけて、情が移ると淋しいものだ。
 チビよ、どこかでちゃんと蝶になるかな。

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