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東京湾学会

○東京湾学会
 東京湾学会総会に出席するために、千葉県立中央博物館まで行く。1年ぶりだが、博物館周辺が何もなかった野原からすっかりニュータウンに変貌していることに驚いた。
 学会そのものは、理事会・総会・講演と、例年通りに進行した。面白かったのは、昼の休憩の合間に見学した博物館の企画展「化石が語る熱帯の海・1600万年前の日本」で、それによれば、ようやく形を成し始めた日本列島のあたりは、新第三紀中新世初め(1800万年前)には、海は熱帯状態、陸は暖温帯状態で、また1600万年前になるとそれが頂点に達した「トロピカル・スパイク」状態になり、熱帯前線は今の鶴岡~二戸あたりまで達し、また亜熱帯前線はさらに北の北海道南部にまで及んでいたことが分かるという。つまりマングローブやサンゴが広がっていたということだ。また大陸移動などの原因によって、中新世は温暖化と寒冷化とを繰り返しており、温暖期の暖かさは6000年前の縄文海進時期よりも甚だしかったということだ。縄文海進期、古東京湾は北関東の奥まで入り込んでいたのだから、それよりも温暖だった時期の水面の高さは推して知るべきだ。
 展示の最後には、現代の二酸化炭素濃度が中新世よりもはるかに高いこと、しかもその増加率が極めて短時間で急激なことを図表化して警鐘を鳴らしていたが、たしかに深層海流すら消滅しつつあるといわれる現代は、中新世並みかそれ以上の温暖化時期を迎えつつあるのかもしれない。それが人為のみに帰せられるべき問題なのか、それとも地球自らの営みなのか、さらには以前にも書いたごとく人間というウイルスを駆除するための地球の発熱なのか、そのあたりもあらためて考えさせられたよい企画だった。
 他にも景観生態学に基づいた房総半島生活史・生活誌のジオラマなど、千葉中央博物館の展示は巧みで興味深い。
 さて学会終了後は、これも吉例で千葉駅まで出て懇親会となり、1年振りで会う先生方と楽しく話をして、総武電車で東京に戻ったのだった。
 東京湾学会は研究者と市民に対してともに開かれた、東京湾およびその周辺の環境生態を学際的に捉えていくことを目的とした集まりで、定期的にセミナー・探訪会などの活動も行っている。もしも興味をお持ちの方は、千葉県立中央博物館・資料管理研究科長・筑紫敏夫先生までお問い合わせ頂きたい。

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