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マイナス100点

 感情が鈍磨している。いや感じないように無意識がそうさせている。そうでもしないと、日々を過ごしていけない。
 腹は減るのだが、食欲がわくというのではない。食べても味はわかるが、旨いとは感じない。つまり感受性の鈍磨だ。
 畢竟、喜びがないということだ。
 いっときの喜びの後には、どうせ悲しみが来る。なまじ喜んだ分、悲しみの量は倍になる。単純な数直線上の計算だ。そう思うから、喜びなぞ感じない。ない方がいい。しかして来たる悲しみは常に喜びより大きいから、喜びは打ち消されてしまう。
 これをシミュレートしてみよう。
「なにかまあ、少しはよくやった(かもしれない)。プラス1点。ああ失敗した、うまく行かなかった。マイナス100点。リカバーせねばならぬポイント、差し引きマイナス99点。なにかまあ、よくやった。プラス1点。残りマイナス98点。失敗した、うまく行かなかった。マイナス100点。リカバーしなければならないポイント、差し引きマイナス198点。」
 私の人生は、このようなものだ。私は人生を、このようなものと感じている、考えている。
 こうして、私にはもう、喜びがない。だったら喜びなぞ、なくていい。感情なぞなくていい。ロボットになりたい。

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